上田布施の方が最近、『嵯峨音頭』を踊る模様を録画したビデオを観たのだそうだ。観始めて、しばらくすると何だかウキウキしてきて自然に体が動き出したという。そして、昔ウキウキしながら盆踊りを踊っていたこと、その頃の時代を一緒に生きた人々の姿をいつの間にか思い出していったのだという。そしてポツリとこう言ったのだそうだ。

「あの盆踊りは、あの頃、本当に楽しかったねぇ。」

今、上田布施では、かつてのような盆踊りは行われていない。(平成14年6月現在)

太鼓叩きがいない、『音頭口説』がいない、そして櫓を立てる人が、踊りを踊る人がいないから、だ。踊りたくても、踊れない。これが現状なのだが、上田布施の地でかつての勇壮な太鼓の音、『音頭口説』たちの凛としたうた声が聞こえ、そして粋な踊りを踊る人があふれる盆踊りをもう一度、見てみたい。そして一緒に踊りたい。耳を澄ますと、地元の人から、少しずつそんな熱い思いのこもった声が聞こえてくる。

もう一度、あの頃の盆踊りがよみがえったら、きっと、皆、昔感じたように、なんだかウキウキしてドキドキしてくるのではないだろうか。そうしてきっと、少年のような目をして、顔をしわくちゃにしてこう言うのではないだろうか。

「上田布施って良い所だよね。」

「上田布施に住んでいて、本当に良かったね。」

と。


参考文献:
●中道静夫  「嵯峨踊の由来(その一)(その二)」 『光地方史研究』第九号   1983年
●林芙美夫  『郷土館叢書第四集 田布施地方の口承文芸 民話・民謡・ことわざ』1998年